ヤマハスタジアムでFC東京の土肥がブーイングされ,神戸の布部が拍手される理由
磐田サポは割とのんびりした人が多くて,ヤマハスタジアムではすごいブーイングとかはほとんどない。さすがに誰もが実力を認めざるを得ないエメルソンとか,磐田が嫌だから移籍していった奥とか,磐田には因縁浅からぬ縁があるような気もする大久保とかにはそれなりのブーイングが起きるけれど。そんな大人しいイメージの磐田サポーターだが,一頃,FC東京の土肥にかなりの人がブーイングしていた時代があった。今年は,ちょっと有力な選手へのブーイング程度だったけれど。磐田サポーターの一部が,いまだに執念深く土肥にブーイングしているのには理由がある。
1997年5月17日,1stステージアウェイの柏戦のことだ。当時は,日立台しかなかったので日立台での試合だった。確か雨だったと思う。私は日立台ゴール裏で観戦していた。2-1とリードされていた磐田はロスタイムに,福西のゴールで同点に追いついたと思われた。主審のゾラン・ペトロヴィッチ氏もゴールマウスを指さし得点を認めた。しかし,柏キーパーの土肥の抗議によって副審に確認したことで判定が覆り,福西のハンドということになった。
(以下は当時の日記)
試合については,いまだに冷静に語ることができない。幸先良く磐田が先制したが,ジャメーリの明らかに故意のハンドを流されたこと,福西のPKを流されたこと,ゴール後,福西がハンドをしたかどうかわからない位置にいた副審によって,ハンドと主審が判断を変えたことなどで,1-2で負けた。試合後は,しばし,呆然としたが,絶対に主審と副審をゆるさない,とかたく心に誓った(とはいってもできることは,手紙などで問いかけていくことくらいなのだが)。
副審の位置からは福西がハンドだったなんて角度的にわかるはずもなかったことだ。当時監督だったフェリペは選手を引き上げるなどの抗議をした。私は怒りのあまりとっととスタジアムを後にしてしまったが,プログレッソを主体とした磐田サポーターは随分遅くまで抗議行動をしたらしい。その後磐田は失速し優勝争いから脱落し,また,フェリペ監督も磐田を放り出して,ブラジルの名門チームの監督として違約金を支払って出ていった。
それ以来,土肥はチームを柏から移った後も,ヤマハスタジアムではブーイングされることになった。
そして,1997年9月6日の2ndステージ第10節の柏戦だ。一方的な復讐の念に燃える磐田サポーターは,必勝の思いで応援する。当日だけの特別許可までもらって紙吹雪をまいたりした。豪雨だった。冷たい雨だったと記憶している。だが,ジャメーリに先制され,どんどん時間はなくなっていく。
(以下は当時の日記)
試合自体は,磐田が終始ゲームを支配していたのだけれど,柏のカウンターで先制された。ああ,押して押して押してカウンター一発で沈むってのは磐田のパターンだよなあ,とか暗い気分でハーフタイムを迎える。磐田は悪くないし,応援団も気合いが入っていた。ただ,点が入らない(笑)。後半も終始磐田ペースで,何度か決定的な形も鈴木秀人がハンドをとられてノーゴールになったりしていて,ああ,これで優勝はだめかと思い始めていた後半24,5分頃,鈴木秀人からのクロスをいろいろあった後に布部がきっちり決めて同点。欲求不満に陥っていた磐田は,大歓声につつまれる。後は押せ押せ。柏は完全に脚がとまっていていつ点が入っても不思議ではない。中山がノーマークドフリーをバーにあてたりして,ああ,延長かと思い始めていた終了間際,鈴木秀人の放り込みからのごちゃごちゃの末に布部が押し込んで,結局2-1で磐田が逆転勝ちした。驚喜する観客。
その後,磐田はいろいろあったすえにステージ優勝し,さらには奇跡的にチャンピオンシップも勝ち初のJリーグ優勝を果たした。
布部は,結局その2得点だけでシーズン後は移籍してしまった。しかし,布部は他チームの選手であるにもかかわらず,磐田スタジアムでは拍手を受ける数少ない(ほとんどいない?)選手となった。
その後,冷静になった後で考えてみた。私が怒っていたのは誤審の結果怒っていたわけではなくて,誤審の結果チームが負けてしまったからだけにすぎないことに気づいた。人がやっていることだもの,フットボールに誤審はつきものだ。だが,それは長い時間を経過してみると悪い結果につながる誤審だけではなく,良い結果につながる誤審も同じだけあったということに気づかされる。結局は,それもフットボールの一部なのだ。
日本の審判のレベルが特に低いとは思わない。ヨーロッパの試合を見ても誤審やゆらぎのある判定なんていくらでもあるし,チャンピオンズリーグの決勝を拭いた人が日本で主審をしていたことがあったが,その判定は本当にひどいものだった。
結局は,審判が問題なのではなくてチームがその結果負けたことだけが問題なのだ。いや,私の場合はだけれど。ここしばらくの審判への風あたりの強さを見ると,結局チームが負けたり引き分けたから言っているだけのようにしか思えない。本当に主審が問題だというのであれば,勝った試合にこそ言うべきだと思う。だが,そんなチームやサポーターはいまだかつて見たことがない。審判問題への解決方法はない。地道にダメだと思われる審判を淘汰していくしかないし,そういったシステムはすでにある。時間がかかるだけのことだ。一番簡単な誤った判定への解決策は,優勝してしまうことだ。まったく誤審なんて気にならなくなってくる。それでも土肥にブーイングを続ける磐田サポーターは,個人的にえらいもんだと思う。ただの風物詩なのかもしれないけれど。
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コメント
FC東京のサポーターも未だに中払にはブーイングです。そこはもう風物詩というか、アヤを楽しむものだと思います。
今年もまた、ああ、土肥ちゃんブーイングされてるなあ、と思いましたが、こっち側でミスをしてそっち側ではナイスセーブも多かったから、まあいいんじゃないですかね。
投稿: おがん | 2004.04.19 07:29
正直なところ,土肥は当たり前のアピールしただけだし,手際が悪かった審判団に怒りをぶつけるべきじゃないかなあと個人的には思います。でも,主審はもう日本にはいないんで,伝統として土肥にブーイングしているだけのような気もします。土肥もヤマハでブーイングされなくなったらさみしく感じるかもしれないし。
歴史ってほどじゃないけれど,積み重ねってやつかもしれません。
投稿: Yam. | 2004.04.20 12:25